こう見えて?彼女、本作を発表する前の年のスウィング・ジャーナル誌のポール・ウィナー。要するに、
日本のジャズ・ヴォーカル界の女王なわけで。今回はございませんが帯にはこうあります。"日本ジャズ界のトップ・レディー ロックに挑戦!!"
ってトップになった途端全く違う畑、当時あの
マイルスもライバル視していた
ロックのアルバムを制作してしまう。ジャケの様などや顔?にもなるわけでございます。彼女がロックに挑戦ならば迎え撃つロック勢もまた女王に挑戦するわけで。白羽の矢が立ったのは鍵盤に大野克夫と
村井邦彦、ドラムが
つのだひろと原田裕臣、ベース宇野もんどとギターのほしいも小僧ですが、最後の二人は"誰やねん?!"ですが、フロム・はっぴいえんど、細野晴臣と
鈴木茂でございます。"対どや顔部隊"として鉄壁の布陣。間違いない仕事をしてくれるのでございます。
A1~A3はムッシュの作曲でしてA1は氏のアルバム「どうにかなるさ アルバムNo.2」('71)にも収録されてる曲。A2はタイトルにもあるようにアップテンポなブルース・ナンバーで、詞は大橋一枝。A3も彼女の詞、こちらは女のありのままの気持ちを如何にもムッシュのセンスによるハモンドの音色にのせて歌う、ケメコさんのヴォーカルがハマリまくった好曲。そして本作の白眉、タイトル・センスも秀逸なA4の詞は山上路夫、曲は
大野雄二。試聴できますので、ご存じない方は是非聴いていただきたい一曲でございます。A5は再びムッシュの作曲、詞もそんなフィーリングですが大橋一枝によるもの。コーラス・ワークが効果的な、曲終わりのおそらくムッシュによる"トゥッ トゥ~"のコーラスでフェード・アウトする件は、思わずサブイボたちまくりでございます。A6は詞・曲ともムッシュ。氏の美意識に基づいた、ワールド・スタンダード・ロックンロール・ナンバーと存じます。
B1は元ビーバーズのヴォーカル、成田賢の作詞・曲による前述A6に待ったをかけるかのような、シンプルButクールなロック・ナンバー。そして見逃せないのがそのタイトル。一見ラグビーの精神のようですが(笑) ていうか、楽曲のほとんどに日本語と英語のタイトルがつけられ、その何れも素晴らしいのは、世界を見据えたムッシュの美学によるものと存じます。B2は個人的本作の裏本命。詞・大橋一枝、曲・村井邦彦で、"これぞ日本の歌" 泣かずにはいられません。"でも泣いてばかりもいられません"と言わんばかりのB3は、本作屈指の出来のROCKチューン。その印象的な詞とタイトルは
安井かずみ、曲は一聴ムッシュのようですが本作のハモンド奏者である大野克夫によるもの。曲途中で3拍子に変わる件など鳥肌もの。たまりません!
ラストは"好きにやっちゃって~(by キムタク)" ムッシュとケメコさんによるまんま「You Talk Too Much」もう素晴らし過ぎ!
便宜上
JAZZ VOCALとしてますが、日本屈指の
ロックアルバムと存じます。ていうか、何で「アンブレラ」なの?
窓をよこぎる雲 Drifting Clouds 作詞・山上路夫 作曲・大野雄二真昼の青空に浮かんだ 小さなわた雲 まぶしい あなたといる 部屋の窓の
四角な空の中ただよって どこへいく
まぬけなレコード 聴こえる 私はあなたに抱かれる あなたの指 たわむれてる
私の髪の毛とたわむれて 遊んでる
目を閉じていると 世界は遠く すべては夢の中のようなのよ
サラサラと時だけが こぼれるわ ただただ
いつしかわた雲ながれて 右から左にうつった 目を閉じてた そのすきなの
それとも永いこと いだかれていたかしら
あなたがふざける吐息が 私の首すじくすぐる 昼下がりの風が 部屋の
窓かけゆらしてる 音もなくゆらゆらと
なぜかしらひどく もの憂い真昼 あなたの二人 言葉も忘れ
時の中ただよって いだき合うだけ だけ
いつしかわた雲ながれて どこかに姿をけしたの 目をはなした そのすきなの
それとも永いこと ぼんやりといていたの
Kimiko Kasai – Umbrella ’72 ExpressA1. ベッドの舟で愛の海へ Over The Waves With Love
A2. ジョージのブルース Blues For George
A3.
とじこめて Closed InA4.
窓をよこぎる雲 Drifting CloudsA5. 渇き Barren
A6. エンド・オブ・ラブ End Of Love
B1. すべては一部のすべて It's All In One
B2.
四つの季節 Winter, Spring, Summer & FallB3. ちょうど一時間 It's Only An Hour
B4. ユー・トーク・トゥ・マッチ You Talk Too Much
Credit;
Producer - かまやつひろし Hiroshi Kamayatsu
Recording Engineer - 高橋秀男 Hideo Takahashi
Vocal - 笠井紀美子 Kimiko Kasai
Drums - つのだひろ Hiro Tsunoda & 原田裕臣 Yujin Harada
Electric Bass - 宇野もんど Mondo Uno
Guitar - ほしいも小僧 Hoshiimokozou
Hammon Organ & Piano - 大野克夫 Katsuo Ono
Electric Piano - 村井邦彦 Kunihiko Murai
Photography - Yoshinobu Jumonji
- その他のケメコさん作品 -・
Kimiko Kasai & Mal Waldron「One For Lady」('71 Victor)